[[index.html|一言芳談抄]] 巻之下
====== 69 有云はく後世を願はば世路を営むがごとし・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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有(あるひと)云はく、「後世を願はば、世路(せいろ)を営むがごとし。今日すでに暮れぬ。渡世(とせい)励まざるにやすし。今年もやみやみ闌(た)けぬ。一期(いちご)、急がざるに過ぎぬ。宵(よひ)には臥して歎くべし、いたづらに暮れぬることを。暁(あかつき)は覚めて思ふべし。終日(ひめもす)に行ぜむことを。
懈怠(けだい)の時には、生死無常(しやうじむじやう)を思へ。悪念思惟(あくねんしゆい)の時には、声をあげて念仏すべし。鬼神魔縁(きじんまえん)等におきては、慈悲をおこして、利益(りやく)を与へ、降伏(がうぶく)の思ひをなすことなかれ。
貧(ひん)は菩提の種、日々に仏道にすすむ。富(とみ)は輪廻(りんゑ)のきづな、夜々に悪業(あくごふ)を増す」。
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===== 翻刻 =====
有云後世(ごせ)をねがはば。世路(せいろ)をいとなむがごとし。けふす
でに暮(くれ)ぬ。渡世(とせい)はげまざるにやすし。今年(ことし)もやみ
やみ闌(たけ)ぬ。一期(ご)いそがざるに過(すぎ)ぬ。よゐにはふして
なげくべし。いたづらにくれぬることを。暁はさめて/ndl2-6l
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/6
思ふべし。ひめもすに行(ぎやう)せむ事を。懈怠(けだい)の時(とき)に
は。生死無常(しやうじむじやう)を思へ。悪念思惟(あくねんしゆい)の時(とき)には。声(こゑ)をあ
げて念仏(ねんぶつ)すべし。鬼神魔縁(きじんまえん)等にをきては。慈悲(じひ)
を。おこして。利益(りやく)をあたへ。降伏(がうぶく)の思ひをなす事
なかれ。貧(ひん)は菩提(ぼだい)のたね。日々に仏道(ぶつだう)にすすむ富(とみ)
は輪廻(りんゑ)のきづな。夜々に悪業(あくごう)をます/ndl2-7r
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/7/