十訓抄 第四 人の上を誡むべき事 ====== 4の19 孔子路を過ぎ給ひけるに老翁一人会ひたり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 孔子、路を過ぎ給ひけるに、老翁一人会ひたり。孔子に向ひて、三度口を開きて、物をば言はざりけり。 孔子、これを案じ給ひけるに、「『三度口は開くとも言葉な出だしそ』と教へけり」とぞ、心得給ひける。 ある文には、「しばしば多言を出だしなどして、三緘の誡を顧みず」と書けるは、このことなりとぞ。 これらにて、心得べし。 ===== 翻刻 ===== 孔子路ヲ過給ケルニ、老翁一人値タリ、孔子ニ向ヒ テ三度口ヲアキテ物ヲハ云サリケリ、孔子是ヲ/k172 案給ケルニ、三度口ハアクトモ詞ナ出シソトヲシヘケ リトソ心得給ケル、或文ニハシハシハ多言ヲ出ナトシテ三 緘ノ誡ヲ不顧トカケルハ此事也トソ、是等ニテ心得 ヘシ、/k173