[[index.html|醒睡笑]] 巻4 聞こえた批判
====== 23 人ありて所司代に出で申し上げけるはわれらの家へ常に参る乞食の候ふ・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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人ありて、所司代に出で申し上げけるは、「われらの家へ常に参る乞食(こつじき)の候ふ。ゐざりにてあれば、ふびんに存じ、折節は庭のすみに臥せりなどいたし候ひつるが、外より盗人の入りたるとも見えざるに、飯(めし)をつかまつるる釜の失せ候ふ。案ずるに、かのゐざりの取りたるものならん。いかが」と申せば、多賀豊州((多賀高忠。ただし、[[:text:chomonju:s_chomonju434|『古今著聞集』434]]では藤原兼光。))、聞きて、「そのゐざりは、いづくにゐるぞ」と尋ね、「さらば、そちは帰れ」とて、戻されたり。
後、かのゐざりを、「物取らせんとなり。参れや」と呼び寄せ、「ふびんの姿なるに、あれにここなる釜を取らせよ」とて、失せたりしほどの釜をやりければ、かのゐざり喜び、頭(あたま)にかぶりて帰る。「さては件(くだん)の釜を盗みたること疑ひなし」とて、下知せられける。
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===== 翻刻 =====
一 人ありて所司代に出申上けるは我らの家
へ常に参る乞食(こつじき)の候ゐさりにてあれはふ
ひんに存折節は庭のすみにふせりなと
いたし候つるが外より盗(ぬす)人のいりたるとも見
えさるに飯(めし)を仕る釜(かま)の失(うせ)候案(あん)するに彼(かの)ゐさり
のとりたる物ならんいかかと申せは多賀
豊州聞て其ゐさりはいづくにゐるぞと
たつねさらはそちはかへれとてもとされ/n4-22r
たり後(のち)かのゐざりを物とらせんとなり参
れやとよびよせふびんのすかたなるにあれ
にここなる釜をとらせよとてうせたりしほどの
釜をやりければかのゐざりよろこひあたまに
かふりて帰るさては件(くたん)の釜(かま)をぬすみたる事
うたかひなしとて下知せられける/n4-22l