[[index.html|隆房集]] ====== 2 昨日まで恨みし袖に今朝よりは逢ふ嬉しさを包みつるかな ====== ===== 校訂本文 ===== [[s_takafusa001|<>]] 勝間田(かつまた)の言ひも出ださぬ池にてだにも、濡れにし袖は乾く間なくて、あまたの春秋(はるあき)はゆきかへりにしぞかし。さざ波や近江(あふみ)の海((琵琶湖))のみるめなぎさにたどりては、また月日の数々積もれども、いや年のはにおき所なき、心のうちをせき止めがたくて、忍びも果てずなりにしぞかし。袖に涙のかかりける、契りのほどを知らずして、ありしその夜のあけぼのに、思ひしことのはかなさをなん、   昨日まで恨みし袖に今朝よりは逢ふ嬉しさを包みつるかな [[s_takafusa001|<>]] ===== 翻刻 =====  かつまたのいひもいたさぬいけ  にてたにもぬれにしそては  かはくまなくてあまたのはる  秋はゆきかへりにしそかし  ささなみやあふみのうみの  みるめなきさにたとりては  またつきひのかすかすつもれ  ともいやとしのはにをき所なき/s7l https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/7?ln=ja  こころのうちをせきとめかたく  てしのひもはてすなりに  しそかしそてになみた  のかかりけるちきりのほと  をしらすしてありしその  よのあけほのにおもひし  ことのはかなさをなん きのふまてうらみしそてにけさよりは あふうれしさをつつみつるかな/s8r https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/8?ln=ja