[[index.html|隆房集]] ====== 8 迷ひぬる心の闇の暗ければ明くるも知らぬ今朝の帰り路 ====== ===== 校訂本文 ===== [[s_takafusa007|<>]] あながちに恨むれば、「今宵さらば」と契りて後、暮れを待ちし久しさは、千年(ちとせ)を経る心地なるべし。さて、待ちえたる心の内のやるかたなさ、いひ知らず。小夜更け、人しづまりて後なれば、月の西に傾(かたぶ)くを見るにつけて、明けゆくも、かきくらす心には知らざりければ、具したる人の、「いかにや、明け過ぎぬ」と告ぐる折、急ぎ帰るあさましさに、   迷ひぬる心の闇の暗ければ明くるも知らぬ今朝の帰り路(ぢ) [[s_takafusa007|<>]] ===== 翻刻 =====  あなかちにうらむれはこよひ  さらはとちきりてのちくれを  まちしひさしさはちとせを  ふる心ちなるへしさてまちえたる  心のうちのやるかたなさいひしら  すさよふけ人しつまりてのち  なれは月のにしにかたふくを/s10r  みるにつけてあけゆくも  かきくらす心にはしらさ  りけれはくしたる人のいかに  やあけすきぬとつくるをり  いそきかへるあさましさに まよひぬるこころのやみのくらけれは あくるもしらぬけさのかへりち/s10l https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/10?ln=ja