[[index.html|篁物語]]
====== 1-6 女兄のはかりたるとは知らで怪しう訪れぬと思ふ折・・・ ======
===== 校訂本文 =====
[[s_takamura1-05|<>]]
女、兄(せうと)のはかりたるとは知らで、「怪しう訪れぬ」と思ふ折、この兄、例のごとあるなり。「道合ひ人の、知りも知らぬ人に文(ふみ)通はし、懸想(けさう)じ給ふ人の御心にこそありけれ。かの人は御妻(め)にやがてあはせ奉らん。仲などこそよからめ。許され給ひては不用(ふよう)ぞ」など言ひければ、「なでふ目にかつかん。いかに知りてか、ともかうも思はん」。「世を知らざらん人は、さやうにも言はでこそあらめ。見つかずの有様や。心憂し。思はずなり」などいへば、妹(いもと)いとほしうて、「何か、目に付かざらん人を((底本「目に」の下一字空白で「虫損」とあり。諸本により補う。))、しひも見給へと思はむ」とて入りにけり。
[[s_takamura1-05|<>]]
===== 翻刻 =====
けり女せうとのはかりたるとは
しらてあやしうをとつれぬと
思ふおりこのせうとれいのこと
あるなり道あひ人のしりも/s13r
しらぬ人にふみかよはしけさうし
給人の御心にこそありけれかの人
は御めにやかてあはせたてまつらん
なかなとこそよからめゆるされたまひて
はふよふそなといひけれはなてふ
めにかつかんいかにしりてかとも
かうもおもはん世をしらさらん
人はさやうにもいはてこそあらめ
みつかすのありさまや心うし
おもはすなりなといへはいもといと/s13l
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/13
おしうてなにかめに(虫損)かさらん人を
しひもみたまへとおもはむとていりに
けりれいのふみよみてないしに/s14r
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/14