[[index.html|土佐日記]] ====== 1月1日 大湊 ====== ===== 校訂本文 ===== [[se_tosa09|<>]] 元日、なほ同じ泊(とまり)((大湊))なり。白散(びやくさん)を、ある者((「ある者」は底本「あくもの」。諸本により訂正))、夜(よ)の間とて、船屋形(ふなやかた)にさし挟めりければ、風に吹きならされて、海に入れて、え飲まずなりぬ。 芋茎(いもじ)・荒布(あらめ)も、歯固めもなし。かうやうの物無き国なり。求めしもおかず。ただ、押鮎(おしあゆ)の口をのみぞ吸ふ。この吸ふ人々の口を、押鮎もし思ふやうあらんや。 今日は都のみぞ思ひやらるる。「小家(こへ)の門(かど)の注連縄(しりくへなは)の鯔(なよし)の頭(かしら)、柊(ひひらぎ)ら、いかにぞ」とぞ言ひあへなる。 [[se_tosa09|<>]] ===== 翻刻 ===== 元日なほおなしとまりなり白散を あくものよのまとてふなやかたにさし はさめりけれはかせにふきなら/kd-13r されてうみにいれてえのますなりぬ いもしあらめもはかためもなしかう やうのものなきくになりもとめしも おかすたたおしあゆのくちをのみそ すふこのすふひとひとのくちをおし あゆもしおもふやうあらんやけふは みやこのみそおもひやらるるこへの かとのしりくへなはのなよしの かしらひひら木らいかにそとそいひ あへなる/kd-13l https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100421552/13?ln=ja