大和物語 ====== 第36段 伊勢の国に先の斎宮おはしましける時に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 伊勢の国に、先の斎宮((宇多天皇皇女柔子親王))おはしましける時に、堤の中納言((藤原兼輔))、勅使にて下り給ひて、   呉竹(くれたけ)のよよの都(みやこ)と聞くからに君は千年(ちとせ)のうたがひもなし 御返り事は聞かず。 かの斎宮のおはします所は、「多気(たけ)のみやこ」となんいひける。 ===== 翻刻 ===== 伊勢のくににさきの斎宮おはしまし けるときにつつみの中納言勅使にて くたり給て/d20r くれたけのよよのみやこときく からにきみはちとせのうたかひもなし 御返事はきかすかのさい宮のおはしま す所はたけのみやことなんいひける/d20l