平中物語
また、この男、逍遥しにて、なま田舎へいにけるに、はるかに鶯の鳴きければ、「いづかたぞ」など、供なる人に、
鶯の声のはつかに聞こゆるはいづれの山に鳴く山彦ぞ
とぞ、口遊びに言ひける。
又この男せうようしにてなまゐ中へ いにけるにはるかにうくひすのなき けれはいつかたそなとともなる人に/11ウ
うくひすのこゑのはつかにきこゆる はいつれの山になくやまひこそ とそくちあそひにいひけるさてこの/12オ