一言芳談抄 巻之上
浄土谷(じやうどたに)の法蓮上人1)は、資縁省略(しえんせいりやく)の上、形(かた)のごとくの朝喰(あさげ)し、往生極楽の勤めに忘られて、世の常ならず。これがために、これをいとなむ。念仏心に入るときは、飯(いひ)にもあらず、粥(かゆ)にもあらぬ体なり。年に従ひ、日をおひて容顔(ようがん)衰へ、身力(しんりき)尽きぬ。
良友、尋ね来たりて、訪(とぶら)ひて、返事に云はく、
西へ行く筋一つだにたがはずは骨と皮とに身はならばなれ
浄土谷(じやうどたに)の法蓮上人(ほうれんしやうにん)は。資縁省略(しゑんせいりやく)のうへ。形(かた)のごとくの 朝喰し。往生極楽(わうじやうごくらく)のつとめに。わすられて。世のつねなら ず。これがために。これをいとなむ。念仏心に入ときは。/ndl1-8l
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飯(いひ)にもあらず。粥(かゆ)にもあらぬ体(てい)なり。年にしたが ひ。日ををひて。容顔(ようがん)おとろへ。身力(しんりき)つきぬ。良友た づねきたりて訪(とぶらひ)て返事云 西へゆくすち一だにたかはずは骨(ほね)とかはとに身はならばなれ/ndl1-9r