一言芳談抄 巻之下
又云はく1)、「ある時、心仏房(しんぶつばう)に示して云はく、『世間の鍛冶・番匠(ばんじやう)らが、その道を伝へることは、必ずしもことごとく教へねども、その中に宗(むね)とあることをしつれば、その道を伝へたりといふぞかし。その定(ぢやう)に、この二三年添ひたるしるしには、世を遁れたる身にて、無常を忘れずしてだにあらば、本意(ほんい)なるべし』」。
又云。或時(あるとき)心仏房(しんぶつばう)に示(しめして)云、世間(せけん)の鍛冶(かぢ)番匠(ばんじやう)等(ら)が。其道(そのみち) を伝(つたへる)事は。かならずしも。ことことく教(をしへ)ねとも。其中(そのなか)に 宗とあることをしつれば。其道(そのみち)を伝(つたへ)たりといふぞかし 。其定(そのさだめ)に此(この)二三年(ねん)そひたるしるしには。世をのがれたる/ndl2-5l
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/5
身にて。無常(むじやう)を忘(わすれ)すしてだにあらは。本意(ほんい)なるべし/ndl2-6r