一言芳談抄 巻之下
有(あるひと)云はく、「乞食修行(こつじきしゆぎやう)のついでには、我執(がしふ)・名聞(みやうもん)を遁れて、心しづかに後世の勤めをもし、終はりをも取りつべきところによつて、便宜(びんぎ)の得失などを、かねてよくよく思慮し、見定めておくべきなり。後世の心なき者は、この案(あん)がなきなり」。
有云。乞食修行(こつじきしゆぎやう)の次(つゐで)には。我執名聞(がしうみやうもん)を遁(のがれ)て。心しづ かに後世のつとめをもし。終(おはり)をも取(とり)つべき依所(ところによつて) 。便宜(びんぎ)の得失(とくしつ)などを。かねてよくよく思慮(しりよ)し。みさ だめてをくべき也。後世(ごせ)のこころなきものは。この 案(あん)がなき也/ndl2-11r