富士の山を見れば、五月(さつき)のつごもりに、雪いと白う降れり。
時知らぬ山は富士の嶺(ね)いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらん
その山は、ここ1)に例へば、比叡(ひえ)の山を二十(はたち)ばかり重ねあげたらんほどして、なりは塩尻(しほじり)のやうになんありける。
ふしの山をみれはさ月のつこもりに 雪いとしろうふれり ときしらぬ山は富士のねいつとてか かのこまたらに雪のふるらん その山はここにたとへはひえのやまをは たちはかりかさねあけたらんほとしてなり はしほしりのやうになんありける/s20r
【絵】/s20l