伊勢物語
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昔、氏(うぢ)1)の中に親王生まれ給たまへりけり。御産屋(うぶや)に人々歌詠みけり。御祖父方(おほぢがた)なりける翁2)の詠める、
わが門(かど)に千尋(ちひろ)あるかげを植ゑつれば夏冬誰(たれ)か隠れざるべき
これは貞数の親王3)。時の人、中将4)の子となむ言ひける。兄の中納言行平5)の娘の腹なり。
むかしうちのなかにみこうまれたまへり けり御うふやに人々うたよみけり御 おほちかたなりけるおきなのよめる わか門にちひろあるかけをうへつれは なつふゆたれかかくれさるへき これはさたかすのみこときの人中将の ことなむいひけるあにの中納言ゆきひら のむすめのはらなり/s89r
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/89?ln=ja