昔、いと若き男、若き女をあひ言へりけり。おのおの親ありければ、つつみて言ひさしてやみにけり。
年ごろ経て、女のもとに、「なほ心ざし果たさん」とや思ひけん、男、歌を詠みてやれりけり。
今までに忘れぬ人は世にもあらじおのがさまざま年の経ぬれば
とて、やみにけり。
男も女もあひ離れぬ宮仕へになん出でにける。
むかしいとわかきおとこわかき女をあひ いへりけりをのをのおや有けれはつつ みていひさしてやみにけり年ころへて 女のもとになを心さしはたさんとや思 けんおとこうたをよみてやれりけり 今まてにわすれぬ人は世にもあらし をのかさまさま年のへぬれは/s98l
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とてやみにけりおとこも女もあひはな れぬ宮つかへになんいてにける/s99r