蒙求和歌
楊朱泣岐
楊朱、ものへ行く道のほとりに立ちて、行客を見れば、ある人、東を指し、あるいは西をのぞむあり。
「北とやせむ、南とやせむ。いづれか家、いづれか旅」と思ふに、ありはてぬ別れも、あはれに思ひ知られて、泣き立てりけるなり。
いづちとてわれさへ急ぐ道ならむ行くも止まるもありはてぬ身を
楊朱泣岐 楊朱モノヘユクミチノホトリニタチテ行/客ヲミレハアルヒト東ヲサシ或ハ西ヲ ノソム有リキタトヤセム南トヤセムイツレカイヱイツレカ タヒト思フニアリハテヌワカレモアハレニ思ヒシラレテナキ タテリケルナリ イツチトテワレサヘイソクミチナラムユクモトマルモアリハテヌミヲ/d2-19r