蒙求和歌
黄尋飛銭
海陵の人黄尋、身にまこと深く、人に情け深かりき。
初めは貧しかりけれども、後には、おほきに風吹く時、雨のごとくに銭(ぜに)飛び散る。家の籬(まがき)の梢(こずゑ)、そのほかの庭のきりまで落つること、数も知らず。
みな拾ひ得たること、数千万に及ぶ。つひに富び栄えて、河北に名をほしきままにしけり。
風に散る木々の木の葉の音なくてかきやまがきに雨と降るかな
黄尋飛銭 海陵ノ人黄尋ミニマコトフカク人ニ/ナサケフカカリキハシメハマツシカリケレ トモ後ニハヲホキニ風フクトキアメノコトクニセニトヒチル家ノ マカキノコスヘソノホカノニハノキリマテヲツルコトカスモシラス/d2-53l
ミナヒロヒエタルコト数千万ニヲヨフツヒニトヒサカヘテ河北ニナ ヲホシキママニシケリ 風ニチルキキノコノハノヲトナクテ カキヤマカキニアメトフルカナ/d2-54r