無名抄
俊頼基俊いどむ事
ある人いはく、「基俊は、俊頼をば、『蚊虻の人』とて、『さはいふとも、駒(こま)の道行くにてこそあらめ』と言はれけれど、俊頼はかへり聞きて、『文時・朝綱詠みたる秀歌なし。躬恒・貫之作りたる秀句なし』とぞ、のたまひける」。
俊頼基俊イトム事 或人云基俊は俊頼をは蚊虻の人とてさはいふ ともこまのみちゆくにてこそあらめといはれけ れと俊頼はかへりききて文時朝綱よみたる 秀歌なしみつねつらゆきつくりたる秀句 なしとその給ける/e28l