無名抄
俊恵難俊成秀歌事
1)「かの歌は『身にしみて』といふ腰の句のいみじう無念に思ゆるなり。これほどになりぬる歌は、景気をいひ流して、『ただそらに身にしみけんかし』と思はせたるこそ、心にくくも優(いふ)にも侍れ。いみじくいひもてゆきて、歌の詮とすべき節を、さはさはといひあらはしたれば、無下(むげ)にこと浅くなりぬるなり」とぞ。2)
俊恵難俊成秀哥事 かの哥は身にしみてといふこしの句のいみしう無念 におほゆる也これほとになりぬる哥は景気を いひなかしてたたそらに身にしみけんかしと おもはせたるこそ心にくくもいふにも侍れいみしく/e49l
いひもてゆきて哥の詮とすへきふしをさはさはと いひあらはしたれはむけにことあさくなりぬる なりとそそのつゐてにわか哥の中に/e50r