醒睡笑 巻1 落書
西陣といふは絹屋(きぬや)のあまたある所なるが、一とせ黒船渡らず、糸高直(かうぢき)なるゆゑ、「手前不如意なれば、孝養(きやうやう)1)の営みも調(ととの)へがたし。さるにより、まづしばしは月忌(ぐわつき)の僧衆(そうしゆう)もおはするな」と申し合へる時、
一 西陣といふは絹屋のあまたある所なるか一 とせ黒舟(くろふね)わたらす糸高直なる故手前不如 意なれは孝粮(きやうやう)のいとなみも調かたしさるに よりまつ暫(しはし)は月忌(くわつき)の僧衆(そうしう)もおはするなと申 あへる時 西陣にいかなるてきのあるやらむ/n1-35r
ときもあけけりはたもあけけり/n1-35l