醒睡笑 巻2 賢だて
和泉国に塩穴(しはな)といふ侍あり。馬上より銭の落ちたるありと見付け、馬を止め、中間(ちうげん)に、「あれなる物を取りて来たれ」と。中間取り上げたれば、「柿のへたでござある」と。「われも柿のへたとは見たよ。されども、馬が恐るるほどに、それに取らせた」。
一 和泉国に塩穴(しはな)といふ侍あり馬上より銭 のおちたるありと見付馬をとめ中間に あれなる物をとりて来れと中間とりあけ たれは柿のへたて御座あるとわれも柿の へたとは見たよされとも馬がおそるるほどに それにとらせた/n2-48r