醒睡笑 巻3 文字知り顔
革細工の方へ、侍のもとよりとて、太刀に文(ふみ)を添へ持ち来たる。開き見れば、「この日日念を入れ給はり候へ」とあり。つひに読む者なし。
亭主、わざと侍のもとへ行き、直(ぢき)に尋ねければ、「それこそ誰も知るべき文字よ。頭(かしら)の『日』は『一日(ついたち)』の『たち』、次の日は『二日(ふつか)』の『つか』。『太刀の柄(つか)を巻きてくれよ』にて済みたるものを」となり。
一 革細工のかたへ侍のもとよりとて太刀(たち)に文を そへ持来るひらき見れは此日日念(ねん)を入給り 候へと有つゐによむ者なし亭主わざと侍のもと へ行直(ちき)に尋けれはそれこそ誰もしるへき 文字よかしらの日はついたちのたち次の日は 二日のつか太刀のつかをまきてくれよにて すみたる物をとなり/n3-6l