醒睡笑 巻5 婲心
もとは都に住みて、子ども五人持ちしが、住みわびて筑紫に下りし。ある時、妻の方への文に 、「絹十疋・錦百把(ば)参らする。ただし偽りなり」と書きたり。
その返事に、
心ざしある方よりの偽りは世のまことより嬉しかりけり
となん言ひやりける。
女房の思惑、ためしなにこそ。
一 もとは都にすみて子とも五人持しが住侘(わび)て/n5-3l
筑紫(つくし)にくだりし或時妻(つま)の方への文に 絹(きぬ)十疋錦百把(ば)まいらするただし偽(いつはり)なり とかきたりその返事に 心さしあるかたよりのいつはりは 世のまことよりうれしかりけり となんいひやりける女房のおもはくためしなに こそ/n5-4r