醒睡笑 巻5 婲心
江州坂本にある母のもとへ、年の暮れの文に、叡山1)より児(ちご)の書きてやりけるは、「小袖一重(ひとかさね)・料紙十帖・帯一筋、参らする」とあり。使に問へばなし。
重ねて見参の時、その旨趣(ししゆ)を母問はれければ、「われがおとなしく、寺のぬしにもなりたらば、それぞれを参らせたいとこと候ふよ」。
一 江州坂本にある母のもとへ年の暮の文に 叡山(えいざん)より児の書てやりけるは小袖一重料紙 十帖帯一筋参らするとあり使にとへばなし 重て見参の時その旨趣を母とはれけれは我 がおとなしく寺のぬしにもなりたらはそれそれ/n5-13r
を参らせたいとこと候よ/n5-13l