醒睡笑 巻5 人はそだち
塗師屋(ぬしや)の息子、手を書きならひて執筆(しゆひつ)をするあり。祈祷連歌より戻りたるを、貴人の方より呼び出だし、会席など趣(おもむき)を尋ね給へるに、誰は十句(く)それは八句と語る。また、「その名は知らず。内赤(うちあか)の小袖着たる人、五ぐ1)出だされてありつるうちを、三ぐは良しとてとめられ、二ぐは悪しきとて戻された」と。
一 ぬしやのむすこ手を書ならひて執筆を するあり祈祷連歌よりもどりたるを貴 人のかたよりよび出し会席なと趣(おもむき)を たつねたまへるに誰は十句それは八句とかたる又 其名はしらす内あかの小袖きたる人五ぐ出 されてありつるうちを三ぐはよしとてとめ られ二ぐはあしきとてもどされたと/n5-62r