醒睡笑 巻7 舞
大夫、舞台に出でて八島を舞ふ。「さる間(あひだ)、判(ほう)1)」とばかりにて、「官」を忘れたり。
鼓打(つづみうち)、「あら官、やあ官」とはやし、つひに「官」を言ひやまず。大夫聞きかね、あげくに拍子を踏んで、せめにかかりあふ。「その官は、はう殿のあとに下らせ給ひけり」。
一 大夫(たいふ)舞臺(ぶたい)に出て八嶋(やしま)をまふ去間(さるあいた)判(ほうと)と斗(はかり) にて官(くはん)をわすれたり鼓打(つつみうち)あら官(くわん)やあ官 とはやしつゐに官をいひやまず大夫聞 かねあげくに拍子(ひやうし)をふんてせめにかかりあふ 其官ははう殿の跡に下らせ給ひけり/n7-58r