この思ひの尽きせぬままには、心もあくがれて、世も憂かりぬべきありさまなり。さてもまた、いづこをさして行き留(と)まるべき心地もせず。虎臥す野辺(のべ)なりとも、「そこ」と教ふる人のなき身のはかなさの、思ひわづらはれて、
君ゆゑにこの世を思ひ放ち鳥(どり)あはれいづくにねぐらさだめむ
このおもひのつきせぬまま にはこころもあくかれてよ もうかりぬへきありさまなり さてもまたいつこをさして ゆきとまるへき心地もせす とらふすのへなりともそこ とおしふる人のなき身の はかなさの思ひわつらはれて 君ゆへにこの世をおもひはなちとり あはれいつくにねくらさためむ/s39l