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隆房集

93 君ゆゑにこの世を思ひ放ち鳥あはれいづくにねぐらさだめむ

校訂本文

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この思ひの尽きせぬままには、心もあくがれて、世も憂かりぬべきありさまなり。さてもまた、いづこをさして行き留(と)まるべき心地もせず。虎臥す野辺(のべ)なりとも、「そこ」と教ふる人のなき身のはかなさの、思ひわづらはれて、

  君ゆゑにこの世を思ひ放ち鳥(どり)あはれいづくにねぐらさだめむ

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翻刻

 このおもひのつきせぬまま
 にはこころもあくかれてよ
 もうかりぬへきありさまなり
 さてもまたいつこをさして
 ゆきとまるへき心地もせす
 とらふすのへなりともそこ
 とおしふる人のなき身の
 はかなさの思ひわつらはれて
君ゆへにこの世をおもひはなちとり
あはれいつくにねくらさためむ/s39l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/39?ln=ja