八日、障(さは)ることありて、なほ同じ所なり。今宵、月は海にぞ入る。これを見て業平1)の君の、「山の端(は)逃げて入れずもあらなむ2)」といふ歌なむ思ほゆる。もし海辺にて詠まましかば、「波立ちさへて入れずもあらなむ」とも詠みてましや。今この歌を思ひ出でて、ある人の詠めりける、
照る月の流るる見れば天の川出づるみなとは海にざりける
とや。
八日さはることありてなほおなし ところなりこよひつきはうみにそ いるこれをみてなりひらのきみの/kd-17r
やまのはにけていれすもあらなむと いふうたなむおもほゆるもしうみへ にてよまましかはなみたちさへて いれすもあらなむともよみてましや いまこのうたをおもひいててあるひ とのよめりける てるつきのなか るるみれはあまのかはいつるみなとは うみにさりけるとや/kd-17l