十六日、風・波やまねば、なほ同じところ1)にとまれり。ただ、「海に波なくして、いつしか御崎(みさき)2)といふ所渡らん」とのみなむ思ふ。
風・波、頓(とに)にやむべくもあらず。ある人の、この波立つを見て詠める歌。
霜だにもおかぬかたぞといふなれど波の中には雪ぞ降りける
さて、船に乗りし日より今日までに、二十日あまり五日になりにけり。
十六日かせなみやまねはなほおなし ところにとまれりたたうみになみ なくしていつしかみさきといふところ わたらんとのみなむおもふかせなみ とににやむへくもあらすあるひとの このなみたつをみてよめるうたしも/kd-24r
たにもおかぬかたそといふなれとなみ のなかにはゆきそふりけるさてふね にのりしひよりけふまてにはつかあ まりいつかになりにけり/kd-24l