二十七日、風吹き波荒ければ、船出ださず。これかれかしこく歎く。男たちの心なぐさめに、漢詩(からうた)に、「日を望めば都遠し1)」などいふなることのさまを聞きて、ある女の詠める歌、
日をだにも天雲(あまくも)近く見るものを都へと思ふ道のはるけさ
また、ある人の詠める
吹く風の絶えぬかぎりし立ち来れば波路(なみぢ)はいとどはるけかりけり
日一日(ひひとひ)風やまず。爪弾(つまはじ)きして寝ぬ。
廿七日かせふきなみあらけれはふね いたさすこれかれかしこくなけく をとこたちのこころなくさめに からうたに日をのそめはみやこ とほしなといふなることのさまを/kd-33r
ききてあるをんなのよめるうた ひをたにもあまくもちかくみる ものをみやこへとおもふみちのはる けさまたあるひとのよめる ふく かせのたへぬかきりしたちくれは なみちはいととはるけかりけりひひ とひかせやますつまはしきして ねぬ/kd-33l