十一日、雨いささかに降りて、やみぬ。かくてさし上(のぼ)るに、東(ひむがし)の方に、山の横ほれるを見て人に問へば、「八幡(やはた)の宮1)」と言ふ。これを聞きて喜びて、人々拝み奉る。
山崎の橋見ゆ。嬉しきことかぎりなし。ここに、相応寺のほとりに、しばし船をとどめて、とかく定むることあり。
この寺の岸ほとりに、柳多くあり。ある人、この柳の影の、川の底に映れるを見て、詠める歌、
さざれ波寄するあやをば青柳(あをやぎ)のかげの糸して織るかとぞ見る
十一日あめいささかにふりてやみぬ かくてさしのほるにひむかしの かたにやまのよこほれるをみてひと にとへはやはたのみやといふこれ/kd-48r
をききてよろこひてひとひとを かみたてまつるやまさきのはし みゆうれしきことかきりなし ここに相応寺のほとりにしはし ふねをととめてとかくさたむること ありこのてらのきしほとりにやな きおほくありあるひとこのやなき のかけのかはのそこにうつれるを みてよめるうた さされなみよする/kd-48l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100421552/48?ln=ja
あやをはあをやきのかけのいと しておるかとそみる/kd-49r