徒然草
因幡国に、何の入道とかやいふ者の娘、形良しと聞きて、人あまた言ひわたりけれども、この娘、ただ栗をのみ食ひて、さらに米(よね)の類(たぐひ)を食はざりければ、「かかる異様(ことやう)の者、人に見ゆべきにあらず」とて、親、許さざりけり。
因幡国に。何の入道とかやいふ者のむ すめかたちよしとききて。人あまたいひ わたりけれども。此むすめただ栗をの み食て。更によねのたぐひをくはざり ければ。かかることやうのもの。人にみゆべき にあらずとて。おや。ゆるさざりけり/w1-31l
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0031.jpg