大和物語
季縄(すゑなは)の少将1)のむすめ右近、故后宮にさぶらひけるころ、故中納言敦忠2)の君、おはしけるころ、頼め給ふことなどありけるを、宮に参ること絶えて、里にありけるに、さらに問ひ給はざりけり。
同じわたりの人の来たりけるに、「いかにぞ、参り給ふにや」と問ひければ、「つねにさぶらひ給ふ」と言ひければ、御文(おんふみ)奉り給ひける。
忘れじと頼めし人はありと聞く言ひし言の葉いづちいにけん
となんありける。
すゑなはの少将のむすめ右近故后/d39l
宮にさふらひけるころ故中納言敦忠 のきみおはしけるころたのめたまふ ことなとありけるを宮にまいること たえてさとにありけるにさらに とひたまはさりけりおなしわたり のひとのきたりけるにいかにそまい り給にやととひけれはつねにさふらひ たまふといひけれは御ふみたてま つりたまひける わすれしとたのめしひとはあり ときくいひしことの葉いつちいにけん/d40r
となんありけるおなし女のもとに/d40l