大和物語
太政大臣(おほきおとど)1)の北の方失せ給ひて、御はての月になりて、御わざのことなど急がせ給ふころ、月のおもしろかりけるに、階(はし)に出で居給ひて、ものいとあはれに思されければ、
隠れにし月はめぐりて出で来れど影にも人は見えずぞありける
おほきおととのきたのかたうせ給て御 はての月になりて御わさのことなといそ かせたまふころ月のおもしろかりける にはしにいてゐたまひてものいとあはれにおほさ れけれは かくれにし月はめくりていてくれと かけにもひとはみえすそありける/d48l