大和物語
三条の右大臣1)のむすめ、堤の中納言2)に逢ひはじめ給ひけるあひだは、内蔵助(くらのすけ)にて3)、内裏(うち)の殿上をなんしける。女は、あはんの心やなかりけん、心もゆかずなんいますかりける。
男も宮仕へし給ひければ、つねにもいませざりけるころ、女、
薫物(たきもの)のくゆる心はありしかどひとりはたえて寝られざりけり
返し、上手なれば良かりけめど、聞かねば書かかず。
延喜九年正月蔵人左衛門佐元右兵衛佐内蔵助(十三年/左少将)/d22r
三条の右大臣のむすめつつみの中納言 にあひはしめたまひけるあひたはく らのすけまてうちの殿上をなんし ける女はあはんのこころやなかりけん こころもゆかすなんいますかりけるお とこもみやつかへしたまひけれはつ ねにもいませさりけるころ女 たきもののくゆるこころはありし かとひとりはたえてねられさりけり かへし上すなれはよかりけめとき かねはかかす/d22l