text:chomonju:s_chomonju259
古今著聞集 管絃歌舞第七
259 長治二年正月五日朝覲行幸ありけるに胡飲酒中院右大臣童にて舞ひ給ひけり・・・
校訂本文
長治二年正月五日、朝覲行幸(てうきんぎやうかう)ありけるに、胡飲酒(こんじゆ)、中院右大臣1)、童にて舞ひ給ひけり。左衛門督2)・右大弁宗忠3)・宰相中将忠教4)、糸竹にたへたるによりて、楽屋の前に座を敷きて着座せられけり。
舞ひいまだ終らざりけるに、法皇5)の召しによりて、胡飲酒の童参りけり。靴を脱がず、御前の簀子(すのこ)にかければ、主上、紅の御衵(おんあこめ)を賜はせけり。右大臣6)、伝へ賜はせけり。童庭に下りて7)舞ひて退き入りければ、父内大臣8)、庭に下りて拝舞し給ひけり。一家の人々、みな下殿せられける、ゆゆしくぞ見え侍りける。
御遊に忠教卿笛を吹かれけるを、主上とどめさせおはしまして、みづから吹かせ給ひける。胡飲酒の童は、笛吹き給ひけり。めづらしくやさしくぞ侍りける。
翻刻
長治二年正月五日朝覲行幸ありけるに胡飲酒中 院右大臣童にて舞給けり左衛門督右大弁宗忠宰相 中将忠教糸竹にたへたるによりて楽屋の前に座を敷 て着座せられけり舞いまたおはらさりけるに法皇の召 によりて胡飲酒の童まいりけり靴をぬかす御前の簀 子にかけれは主上紅の御衵をたまはせけり右大臣つたへ たまはせけり童庭におとて舞てしりそき入けれは父/s173r
内大臣庭におりて拝舞したまひけり一家の人々みな 下殿せられけるゆゆしくそみえ侍りける御遊に忠教卿 笛をふかれけるを主上ととめさせおはしまして身つから 吹せ給ける胡飲酒の童は笛吹給けりめつらしくやさし くそ侍りける/s173l
text/chomonju/s_chomonju259.txt · 最終更新: 2020/04/01 21:59 by Satoshi Nakagawa